旅、自然、地球、ヒト——アースデイ関連作品のご紹介
自らを「地理的人間」と呼ぶ池澤夏樹は、世界各地を旅し、自然と人間との関係について思索を重ねてきました。その結実として発表する作品には、独自の世界観や自然観が色濃く反映されています。
アースデイにちなんで、そうした作品の一部をご紹介します。
「雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、ぼくを乗せたこの世界の方が上へ上へと昇っているのだ。」——ある日、ぼくの前に佐々井が現れてから、ぼくの世界を見る視線が変わって行った……。
「人は結局は自分のために愛するのかもしれない。」——タイの難民キャンプでボランティアとして働く修子と、会社員の野山。ひたむきに生きる女性と優しくて不器用な男の、愛の物語。
「朝から話をはじめよう。すべてよき物語は朝の薄明の中から出現するものだから。」——南の島の独裁者、マシアス・ギリを巡って繰り広げられる数奇な物語。ミクロネシアへの旅を経て到達した南島文学。
「もう神様はいらない。なぜならば人間は自ら神様になってしまったから。」——ヒマラヤの奥地へ風力発電の技術協力に赴いた林太郎。そこで人々の暮らしや信仰に触れた彼は、現代の文明が失ったものを考えるようになる。
「彼の気持ちの最も深いところには地上を捨てて水の中に帰ってゆきたいという夢想があるのだ。」——今は亡きジャック・マイヨールと過ごした幸福な日々。心に刻まれたクジラとの遭遇。高砂淳二、垂見健吾の写真も収めた、貴重な旅の記録。
「戦争は、子供も女性も年寄りも区別しない。」——イラク戦争によって、世界は何を背負ったのか。その答えを探すには、もう一度、戦争前のイラクを思い出さなければならないだろう。
「船の上の自分とそれを取り巻く半球のような湿原と空は、それで一つの完結した世界のように思われはじめた。」——南から北へ東から西へ、世界を旅する作家は土地の姿を見つめ、人やけものたちと出会い、口福を味わう。
「日本の自然が好きだ。この列島はさまざまな地理的要素がぎっしり詰まったおもしろい国土なのだ。」——列島を歩きながら思索した「日本」のかたち。美しいネイチャーフォト24点も収録。
「祈るとは、自分は何をなすべきなのか、それを伝える神の声を聴こうと耳を澄ますことである。」——2011年3月24日より被災地に通い、見たこと/考えたことをリアルタイムで書き続けた記録。