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毎年秋に開催を予定している「レビューコンテスト」では、毎年9月末までに投稿いただいたレビューの中から入賞作品を選ばせていただきます。コンテストでは、cafe impala 編集部と外部の有識者の方々との厳正な審査の上、受賞作品を選定いたします。
レビューコンテスト受賞者には、池澤夏樹本人へ直接質問する権利やimpala e-books読み放題特典など、ささやかながら素敵なプレゼントをご用意しています。
※但し、新規に投稿されたレビュー数が50本を下回る場合は、選考を翌年に繰り越しさせていただきます。
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レビューに関連する最新情報
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動画公開
「池澤夏樹の書評の書き方講座」Part4(最終回)の動画を公開しました
「impala e-books」1周年を記念して開催された「池澤夏樹レビューコンテスト」。その授賞式の一部として行われた「書評の書き方講座」の動画の最終回をお届けします。書き起こしテキストとあわせてお楽しみください。 & …
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動画公開
「池澤夏樹の書評の書き方講座」Part3の動画を公開しました
「impala e-books」1周年を記念して開催された「池澤夏樹レビューコンテスト」。その授賞式の一部として行われた「書評の書き方講座」の動画をお届けします。書き起こしテキストとあわせてお楽しみください。   …
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動画公開
「池澤夏樹の書評の書き方講座」Part2の動画を公開しました
「impala e-books」1周年を記念して開催された「池澤夏樹レビューコンテスト」。その授賞式の一部として行われた「書評の書き方講座」の動画をお届けします。書き起こしテキストとあわせてお楽しみください。   …
最近のレビュー
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『 夏の朝の成層圏 』
この本について僕はもう何も論じたくありません。僕がこの本に抱く想いは殆ど恋と言って良いでしょう。
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とにかく最初の書き出しから最後の1フレーズまで、一字一句、本に書かれた文章を拾っていけば、それだけで本当に自分が・・・
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漁船から落ちて南太平洋の小さな環礁の島に漂着し、
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最初は生き残るために必死に頭と体を働かせてサバイバルし、
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やがて思いがけない人物や精霊たちとの出会い・交感を通じて、
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人間とは?文明とは?自分の体験の意味とは?・・・
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という思索に入っていく★主人公になりきる★ことが出来ます。
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「遠く水平線の近くに白いフワフワした雲の塊が並んでいる。三檣帆船の艦隊のようだ。その帆の先端の辺りではまだ空はそれ程青くはない。しかし登るにつれて空は青味を増し・・・」
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イントロのこのフレーズは僕にとっては「智に働けば角が立つ。情に掉させば流される・・・」
とか
「ある特定の個人を書こうとすると、一つのタイプを創り出してしまう・・・」
とか
「この物語を書き始めるにあたって私はある戸惑いを覚える・・・」
といった古今東西の有名な本の書き出しに匹敵する忘れられないフレーズの一つです。僕はこのワンフレーズで完全にこの本に捉えられてしまいました。
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池澤夏樹が凄いのは、主人公の思考の流れ=自分だったらこう考える・ああ考える・・・ということを、読者の思考に絶妙にシンクロさせる、静的で心地よいリズムのある文章を書くこと。
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本当に文章が詩のようです。
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読んでいる間中、本当に自分は南太平洋の孤島のヤシの木陰で夏の朝の空気を吸っているような気分になりました。
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この本読んだおかげで毎年夏は必ず透明な海に潜りに行くし、たまにタイに行ったりしますが、出来ればまたモルジブかあわよくば大金稼いでマーシャル諸島に行って環礁の中で潜りまくりたいなぁ~。 -
『 虫とけものと家族たち 』
個人的な話。昨年27歳の私は、妻との新婚旅行でギリシャ・コルフ島を訪れた。勿論、本書を繰り返し読むうちに生まれた「この幸福な土地を実際にこの目で見たい」という衝動を妻に押し付けたのだ。
コルフ島は、予想を裏切らなかった。
旧要塞(パレオ・フルリオ)の頂上から眺めた一面の海と、そこに反射するきらきらした陽光。
空は果てしなく、いつまでも飽きることのない景色。昼からタベルナでワイン片手に喋る人たち。
アテネやサントリーニ島も訪れて垣間見えた。池澤夏樹氏を魅了したこの土地のすばらしさが。
〇
本書は、どこまでも透明なダレル少年の目に映る非凡で愉快な人々、虫・動物、自然の間で織りなされるエピソードの束だ。
しかしそこに描かれたものが事実かといえば、多分そうではなくて、例えばショウペンハウエルにこんなことばがある。
「他人の生涯に起こった痛快な出来事を羨む人があるが、そういう人はむしろ、他人が痛快な出来事として描写しうるだけの重要性をその出来事に認めたというその把握の才をこそ羨むべきであろう」
〇
数々の印象的な場面がいつまでも私の心象を満たす。
紳士気取りの長兄ラリーが湿地で鳥を落とそうと猟銃をぶっ放して用水路に落ちる。そこでの馬鹿丁寧な援助要請には腹を抱えて笑った。
「ホタルのページェント」では、海中で美しく輝く夜光虫を纏ったイルカがホタルと躍り、夢のように幻想的なイメージを呼び起こす。池澤氏は本書の翻訳がきっかけでギリシャへ渡り、生活したことを『ギリシャの誘惑』にまとめている。そのなかで彼は、「幸福のトラウマ」という表現を使っている。
そしてそれは、「帰りたくなかった二人」(『南の島のティオ』収録)の次のことばに託されている。
〇
「そう、きっと来るよ」とトムさんも、あいかわらずの小さな声で言った。
しかしその言葉を聞きながら、この人たちは二度と来ないのではないかとぼくは思った。
……あまりに魅力があるからこそ、危なくて二度と近づけない、彼はそんな風に思うのではないだろうか。
〇
それでもなお、幸福な物語は人を変える。そして旅へ誘うのである。矢野目 大地