共著・編著
ブリキの太鼓 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 Ⅱ-12)
池澤夏樹=個人編集 世界文学全集
3歳で成長をやめたオスカルが、ブリキの太鼓の連打にのせて語る、猥雑で奇怪、寓意と象徴にあふれた物語。ノーベル賞作家の代表作、待望の新訳決定版。映画化。
今は精神病院の住人オスカルが、ブリキの太鼓を叩きながら回想する数奇な半生。胎児のとき羊水のなかで、大きくなったら店を継がせようという父の声を聞き、そのたくらみを拒むために3歳で成長をやめることを決意したオスカルは、叫び声をあげてガラスを粉々に砕くという不思議な力を手に入れる。時は1920年代後半、所はバルト海に臨む町ダンツィヒ。ドイツ人、ポーランド人、カシューブ人など多くの民族が入り交じって暮らすこの港町は、長年にわたって近隣の国々に蹂躙されつづけてきた。台頭するヒトラー政権のもと、町が急速にナチズム一色に染められるなかで、グロテスクに歪んでいく市井の人々の心。狂気が日常となっていくプロセスを、永遠の3歳児は目の当たりにする。ナチス勃興から戦後復興の30年間、激動のポーランドを舞台に、物語は猥雑に壮大に、醜悪に崇高に、寓意と象徴に溢れためくるめくエピソードを孕みながらダイナミックに展開する。『猫と鼠』『犬の年』とあわせ「ダンツィヒ三部作」とされるノーベル賞作家代表作、待望の新訳決定版。
〈ぼくがこの作品を選んだ理由 池澤夏樹〉
社会、あるいは世界、ないし現代史を見る特権的な視点がある。この小説の主人公オスカルは、3歳で身長の伸びを止めることでその視点を手に入れた。彼は戦後の猥雑なドイツを下から見上げながら、斜めに渡るように生きる。こんなうまい設定はないと感心する。
作品情報
発売日:2010/5/14
出版社:河出書房新社
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公開:2015年11月03日 - 最終更新:2019年03月18日