イラクの小さな橋を渡って
戦争は、子供も女性も年寄りも区別しない。
今のイラクを取り巻く状況のすべては、2003年のイラク戦争から始まった。
2002年秋、米軍の攻撃が開始される直前、池澤夏樹はイラクにいた。豊かな文化を物語る遺跡を巡り、陽気な人びとと出会い、滋味深い食べ物に舌鼓を打った。そして、私たちと同じ普通の人びとの頭上に爆弾が降ることを止めたいと奔走した。そのためにこの本を緊急出版した。
イラク戦争は起こり、世界は何を背負ったのか。その答えを探すには、もう一度、戦争前のイラクを思い出さなければならないだろう。
作品情報
発売日:2014/09/18
発行:株式会社ixtan
製作・発売:株式会社ボイジャー
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この作品のレビュー
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『 イラクの小さな橋を渡って 』
「もしも戦争になったとき、どういう人々の上に爆弾が降るのか、そこが知りたかった」
無駄のないシンプルな言葉と印象深い写真の数々に冒頭から引き込まれ、一気に読んでしまった。
「遺跡を見る」という目的でイラクに入国した著者が、イラクの普通の人々の姿を淡々と書き綴っていく。声高らかに戦争反対を
叫ぶわけでも、平和もついて熱く語るわけでもないが、深く胸に響く本だ。たくさん挿入された写真の数々も素晴らしい。市場の様子、遊園地で遊ぶ子どもなど何気ない日常を切り取った写真からは、私たちと何ら変わらない普通の生活を
送るイラクの人々の様子が伝わってくる。人懐っこそうにカメラに笑顔を向ける人々、はにかんだ様子の子ども達、写真を見ていると、遠い国のどこかの人だったのが、一気に隣人のように思えて
くるから不思議だ。そして、イラクの人々の暮らしぶりが丁寧に書き綴られる。そのエピソード一つ一つが積み重なり、親近感を感じれば感じるほど、やるせない気持ちになる。
なぜなら、当時のイラクは破壊されてしまったことを私たちは知っているから。その攻撃を日本はいち早く支持していた事実が重くのしかかってくる。
そして、侵略から十数年経った現在もイラクの治安は回復せず、その間イスラム国が台頭し、テロに脅かされる国が増えた。そんな現在だからこそ、多くの人に必要とされる本だと思う。
わらびお