ハワイイ紀行 完全版
通常、ハワイと呼ばれる太平洋上の島々。しかし島本来の言葉では、ハワイイと発音される。「南国の楽園」として知られる島々の、本当の素顔とは? キラウエア火口を覗き、タロ芋畑を見に行き、ポイを食べる。サーフィンやフラの由来を探り、航海技術の謎を探る…綿密な取材で綴る、旅の詳細なレポート。文庫化にあたり、新たに2章を追加した。ハワイイを深く知りたい人必読。
作品情報
< 目次 >
Ⅰ 淋しい島
Ⅱ オヒアの花
Ⅲ 秘密の花園
Ⅳ タロ芋畑でつかまえて
Ⅴ アロハ・オエ
Ⅵ 神々の前で踊る
Ⅶ 生き返った言葉
Ⅷ 波の島、風の島
Ⅸ 星の羅針盤
Ⅹ エリックス5の航海
Ⅺ 鳥たちの島
Ⅻ マウナケア山頂の大きな眼
発売日:2000/7/28
出版社:新潮社
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この作品のレビュー
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『 ハワイイ紀行 完全版 』
年末年始の海外旅行先と言えば、ハワイ。
で、行ってきました、と言いたいところだが、私は、行けるほどの余裕もないので、読むことにした。『ハワイイ紀行【完全版】』。
この本、「紀行」と題されているので、著者の池澤夏樹氏がハワイ旅行で見聞きしたことを綴ったエッセイ風旅行記かと思いきや、違った。カラー写真が多く載っているも、ハワイを巡るのにこの本を持って行くといいよ、とはお薦めしがたい。池澤氏は、ハワイイの地理上の位置に注目する。
ハワイイ諸島は、サンフランシスコから3,900km、東京から6,200km、シドニーからは8,000kmもあり、いかなる大陸からも遥か遠くに孤立している。そんな遠くの島へ人は、どのようにやって来たのか。
池澤氏は、この「ハワイイの地理上の位置」ということを軸に、ハワイイ諸島の成り立ちや歴史、固有の植物・動物、タロ芋栽培、レイやフラにまつわる先住民文化やハワイイ語、サーフィンの魅力(池澤氏はサーフィンにも挑戦している!)や航海技術の謎と、バラエティに富んだ話題をルポルタージュ仕立てで綴っている。
キャプテン・クックの来島を機にハワイイには多くの白人が訪れるようになり、西洋近代文明に飲み込まれていくことになる。しかし、池澤氏は、そうした歴史・史実を踏まえながらも、戦闘的な文明論者・自然保護主義者とは決定的に一線を画している。ハワイイ人に寄り添い、ハワイイを取り巻く流れに竿を差すことなく、一人の旅人としてハワイイの島から島を巡って出会った人々とのインタビューなどを交えながら紹介するという書きぶりは、読者に無用な嫌悪を与えることはない。チクリとさせられることがないわけではないのだが。「土地があって、そこに人が来て住む。これが人間の歴史の基本型である。(中略)この人間の存在の基本原理をハワイイは証明してきた。今の時代になぜそれがうまくゆかないのか。それはまた別の問題であるが、それについて考えるためにもハワイイ諸島とそこの人々を見ることに意義がある。楽園は可能だ、とハワイイはわれわれに教えているのだ。(本書461-462頁)」
本書(文庫版)は「完全版」とのことで、ミッドウェー諸島のことや、マウナケア山頂の「すばる天文台」のことについても加えられている。
ハワイイなのに、なぜミッドウェイ諸島?と思ったら、ミッドウェイ諸島は、ハワイイ諸島から約2,200kmも離れているのに地学的には一連のものなのだそうだ。しかも、この連なりは、海の中で海山となってアリューシャン列島の西端、カムチャッカ半島の根本あたりに向けて連なっているとのこと。
この本を読んでしまうと、ハワイイ旅行への気持ちが高まってくる。気持ちは高まるのだが、バカンス気分だけのハワイイ旅行で終わらせてしまっては満足できないのでは、という気もしてくる。……おかげで、ハワイイに行く機会がまた先になってしまったようだ。あきらパパ