太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよ こんにちは (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 Ⅰ-04)
愛の本質を見つめつづけ、世界に大きな影響を与えた2人の女性作家。仏領インドシナを舞台に、美しい娘と彼女に焦がれる男の駆け引きを描いたデュラスの2作と、サガン衝撃のデビュー作。
「太平洋の防波堤/愛人ラマン」―18歳でわたしは年老いた…仏領インドシナのけだるい風土で暮らす、貧しいフランス人入植者の家族を主人公に描かれる2つの物語。美しい娘と彼女に焦がれる裕福な男。『太平洋の防波堤』で執拗に描かれた恋愛未満の性の駆け引きが、『愛人ラマン』では「流れゆくエクリチュール」とともに性愛の高みへと変奏されていく。デュラスの2つの代表作。「悲しみよこんにちは」―その夏、私は17だった。そして私はまったく幸福だった…17歳の少女セシルは、父の愛人と自分の恋人を使って父の再婚相手を破滅へ追いやる。南仏の海岸を舞台に、少女の好奇心、独占欲、完璧なものへの反発、愛と孤独が描かれる。
〈ぼくがこの作品を選んだ理由 池澤夏樹〉
「太平洋の防波堤」
仏領インドシナのけだるい風土がまず舞台だ。そこでは欲望もけだるくしか動かない。登場するのは美しい娘とその兄と母という家族。そして娘に焦がれる男。性と富の曖昧な交換の物語に読者であるぼくたちは身を沈める、ぬるい風呂に浸るように。
「愛人 ラマン」
まず、これは蒸留された『太平洋の防波堤』だと思った。貧しいフランス人植民者の娘と富裕な中国人との、恋にまでなりきらない性愛の仲が淡彩で投影される。それを回顧して語る声がものすごくエロティック。登場人物の声が聞こえる小説はいい小説である。
「悲しみよ こんにちは」
十九歳でなければ書けない小説があるのだ。若くて、才気があって、まだ人生に無知なゆえに残酷。場所は南仏、時期は夏、美貌の人々、テーマは愛と策略と死……もう完璧ではないか。サガンは一生この処女作をなぞって書き、この小説のように暮らして死んだ。
作品情報
発売日:2008/3/11
出版社:河出書房新社
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