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【本日の栄町市場】
市場でお世話になった方はたくさんいる。その中でも、同じ通りの方々は馴れない市場生活であたふたするわたしを毎日気にかけてくれた。
そんなひとり、池原さんが今年で店を閉めるのだそうだ。わたしが店番をはじめた頃によく本を買ってくれて、市場に馴れるまでとても助けられた。気持ち的にも売上げ的にも。
お母様の時代から営んできたという化粧品屋は、いつ覗いてもお客さんが座っている。商品の良さももちろんだが、一番は池原さんの人柄によるものだ。
いつも笑顔の絶えない彼女は、難しい人、癖のある人とも上手に付き合う。ゆっくりと優しい話し方も、ニコニコ笑いながら深く頷く様子も相手を包み込んでいるような。見掛けるたびにこちらまで優しい人間になれるような。市場のある人は言う。「ねーさんは、神様みたいな人だよ」と。
お客さんの長い話をうんうんと優しく頷いて聞く姿や、ちょっと怒っている人の話をうんうんと聞いている姿。そうだ、ずっと聞いている姿ばかり見てきた気がする。いつもいつも誰かの話を優しく聞き続けていた。簡単に真似できることじゃない。
池原化粧品店が閉まると聞いて、ますますお客さんは増えている。みんな、彼女との時間が終わることが寂しいのだ。
わたしにもいつか、こういうお客さんができるだろうか?
まず、休まないで毎日座らないと!と市場のみんなに言われそう、、、
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