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【本日の栄町市場】
小書店の向いのKさんは、毎日朝から晩まで家と店の仕事で大忙しだ。
そんな彼女は読書が苦手だそうだ。本を読みはじめると止まらなくなり、読み終わるまで寝ることができない。中途半端が嫌いな人なのだ。
そんなKさんが、珍しく「この本読んでみようかな」と手に取った本はわたしと同年代の女性が古書店で奮闘する話。
「やっぱり読み出すと止まらない」と言いながら、ページをどんどんめくっていく。
「この本、あやちゃんの役に立つと思うよー。もっと本を売るために工夫しないと」と、店番のカウンターに座る私に目で問いかける。
「はいー」と言いながらも、何をどうしたらよいものかと考えているうちに店を閉める時間になる。「また、あしたー」
翌朝、店の真ん中に【3冊100円!】という手描きのポップと時代劇の文庫本が綺麗に並んでいた。
「昨日の本を読んだらさ、居ても立ってもいられなくなってさ。寝かせているよりいいんじゃない?」
とKさんが笑う。いつか店の前に並べようと仕舞ったままの本を出しておいてくれたのだ。さっそく、お客さんが喜んで買っていく。
「あやちゃんは本当に商売人に向いてないねー。このような本を読んだら工夫したくなるものだよ」
Kさんの言う通り、わたしは商売人に向いてないと呟くと間髪入れずこう言う。
「はじめから商売人はいない!まだこれだけしか座っていないのに、向いているか向いていないなんて誰が言った?」
さっき、Kさんが言った、、、
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