|
【本日の栄町市場】
与那嶺靴店はわたしたちの店舗(宮里小書店と金城商店)の隣の隣にある。
隣の店はシャッターが閉まったままだから、実質的には隣の店舗。
与那嶺のおとうさんが体調を崩してから数カ月が経つ。
「シャッター閉まってるけど。靴買いたいんだけど、いつ戻ってくる?」
お客さんが困っている姿を見て見ぬ振りができない金城さん。
最初のうちは、店と店の間にある秘密の通路から与那嶺靴店に入り、シャッターを開けてあげていた。
そのうち、与那嶺靴店の娘さんたちからカギを預かり、靴を買いにくるお客さんが来たら、堂々と表からシャッターを開けるようになった。
最近わかったのだけど、与那嶺靴店のお客さんは多い。
金城さん自身の店より与那嶺靴店の商品を多く売る日も少なくなさそう。
一度、金城さんが接客中のとき、与那嶺靴店のお客さんがやって来た。どうしても靴が買いたいという。
わたし、行ってくるよ。と金城さんからカギを預かり与那嶺靴店の少し重たいシャッターをあげる。
熱い空気のこもった店の中で、汗を拭いながらお客さんが靴をじっくり選ぶのを待つ。
はぁ、これって結構難儀な仕事だなぁとポタポタ流れ落ちる汗を見ながら思う。
それでも、お客さんが来る限り、金城さんはこの地味で難儀な作業を続ける。
「靴屋は休みだよって言えばいいのにー。金城さん、大変じゃないですか?」と金城さんに言うと、彼女はこう答えた。
「お客さんが買いたいって言ってるのに、知らんぷりできないよー。それに、少しでもおとうさんの病院の費用の足しになるかもしれないでしょ」
金城さんの優しさに今回も感服した。本当にすごい人なのだ。
|
|
|