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【本日の栄町市場】
年の瀬。いつもは眠っているように静かな栄町市場も人通りが増え、客の流れも早くなる。
年末に近づくにつれ、肉屋、八百屋、魚屋、乾物屋には客が溢れる。
いつもと変わらず、客の多くない(いや、少ない)小書店に座る私まで落ち着かない。
そんなある日、G鮮魚店にマグロを買いに行った。新鮮で安い市場のマグロを買うと、スーパーのものはもう食べられない。
「夕方取りにくるね」と、G鮮魚店のおばあさんと約束して店番に戻る。小書店には冷蔵庫がないから、家に帰る直前まで鮮魚店で預かってもらうのだ。肉も豆腐も花もそれぞれの店で預かってもらう。
夕方、マグロを取りにいくと、私の顔を見たおばあさんが言う。「明日買えー」
聞くと、私のマグロだということを忘れて他の客に売ってしまったらしい。年末で客も注文も多いのだから仕方がない。
翌日、またマグロを買いに行った私。夕方まで預ける約束をして店を去る私におばあさんが大声で言った。「夕方ね。忘れんでよー!」
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