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【本日の栄町市場】
トンネルを抜けるとそこは八百屋だったり、肉屋だったり、乾物屋だったり、おじぃだったり、おばぁだったりする。
栄町市場は無数のスージグワァー(小路)で成り立っている。スージグワァーはだいたいが建物の中に存在しているから、小さなトンネルのようだ。
迷路のように入り組んでいるため、最初は市場内の地理を覚えるのに苦労した。
目的地に辿り着かないのもよくあること。小書店前のスージグワァーを何度も行き来する人を見掛ける。そういうときは、声を掛けて目的地まで案内する。
左右のシャッターが締まったスージグワァーは暗くて夏場でもひんやりとしている。市場の雑音も遮断され、外界から取り残された気分になる。トンネルを抜けると、すぐに明るい市場に戻るのだが、できることなら少しだけ立ち止まってみたい。
そう、私はまだ立ち止まったことがない。
「あら?迷ったの?だー、どこに行きたいの?」
市場の人は本当に親切だ。
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