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【本日の栄町市場】
つい先日、市場の大先輩が亡くなられた。
亡くなる前日まで元気だったから、市場の人たちはみんな驚いた。
その一週間前に、偶然、大先輩と市場の中にあるむじ汁専門店「万富」で並んで昼食を食べた。「万富」のご主人、上原さんが「こういう素晴らしい大先輩がいるからがんばれるのよ。こうなりたいなって思える人がいるのは幸せなことよ。市場で分からないことがあったら、なんでも聞きに行きなさい」と言った。
大先輩は大きな声で「ごちそうさま!」と言って、わたしに向かって頷き、店を出ていった。
買い物をしに行くたび、「めんそーれ!」「にふぇーでーびる!」と大きな声で迎えてくれた。一度、珍しくレジに立った大先輩に「これいくら!?」と大声で聞かれたこともある。
市場の古い話を聞きに行ったときは、記憶を辿りながら丁寧な言葉で教えてくれた。
亡くなられた日は旧暦の一月十六日(グソウ(あの世)の正月)の前日だったから、家族は店を開け、みんな気丈に働いていた。お客さんのために。
これは後から聞いた話だけど、店を閉める時に孫のみんなが大きな声でこう言ったそうだ。「おじぃ、野菜売り切ったよ。おじぃ、ありがとう」
葬儀の日、市場は喪服の人でいっぱいだった。
今日、久々に娘さんと店で立ち話をした。「孫もひ孫もいっぱいで幸せですね。初七日も賑やかだった」
「だからよー。今は毎日が祭みたいさ」と泣きはらした目で言う。
家族のあり方、商売人としての生き方。たくさん勉強させていただきました。
心からご冥福をお祈りします。
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